映画『ラーゲリより愛を込めて』詳しめのあらすじ(ネタバレあり)

『ラーゲリより愛を込めて』を観てきたので、あらすじを書いていこうと思います。
かなり詳しめに書きますので、映画館で新鮮な気持ちで見たい方は、「ネタバレ有」と書いてあるところは読まないようにしてくださいね。

『ラーゲリより愛を込めて』のあらすじ

あらすじ概要(ネタバレなし)

ラーゲリより愛を込めて』は、2022年12月9日公開の戦争ドラマ映画。
以下、ネタバレなしの簡単なあらすじです。公式サイトよりストーリーの引用です。

第二次大戦後の1945年。そこは零下40度の厳冬の世界・シベリア…。わずかな食料での過酷な労働が続く日々。死に逝く者が続出する地獄の強制収容所(ラーゲリ)に、その男・山本幡男は居た。「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます。」絶望する抑留者たちに、彼は訴え続けた――

身に覚えのないスパイ容疑でラーゲリに収容された山本は、日本にいる妻・モジミや4人の子どもと一緒に過ごす日々が訪れることを信じ、耐えた。劣悪な環境下では、誰もが心を閉ざしていた。戦争で心に傷を負い傍観者と決め込む松田。旧日本軍の階級を振りかざす軍曹の相沢。クロという子犬をかわいがる純朴な青年・新谷。過酷な状況で変わり果ててしまった同郷の先輩・原。山本は分け隔てなく皆を励まし続けた。そんな彼の仲間想いの行動と信念は、凍っていた抑留者たちの心を次第に溶かしていく。

終戦から8年が経ち、山本に妻からの葉書が届く。厳しい検閲をくぐり抜けたその葉書には「あなたの帰りを待っています」と。たった一人で子どもたちを育てている妻を想い、山本は涙を流さずにはいられなかった。誰もがダモイの日が近づいていると感じていたが、その頃には、彼の体は病魔に侵されていた…。

松田は、危険を顧みず山本を病院に連れて行って欲しいと決死の覚悟でストライキを始める。その輪はラーゲリ全体に広がり、ついに山本は病院で診断を受けることになった。しかし、そこで告げられたのは、余命3ヶ月― 山本により生きる希望を取り戻した仲間たちに反して、山本の症状は重くなるばかりだった。それでも妻との再会を決してあきらめない山本だったが、彼を慕うラーゲリの仲間たちは、苦心の末、遺書を書くように進言する。

山本はその言葉を真摯に受け止め、震える手で家族への想いを込めた遺書を書き上げる。仲間に託されたその遺書は、帰国の時まで大切に保管されるはずだった…。ところが、ラーゲリ内では、文字を残すことはスパイ行為とみなされ、山本の遺書は無残にも没収されてしまう。山本の想いはこのままシベリアに閉ざされてしまうのか!?死が迫る山本の願いをかなえようと、仲間たちは驚くべき行動に出る――

戦後のラーゲリで人々が起こした奇跡―― これは感動の実話である。

映画『ラーゲリより愛を込めて』公式サイト」より引用

映画『ラーゲリより愛を込めて』のあらすじ(ネタバレ有)

ここから、ネタバレ有りでより詳しくあらすじを解説していきます。 

1945年、敗戦間近の満洲国ハルビン

舞台は1945年の満洲。
そこで暮らす山本幡男(二宮和也)と妻のモジミ(北川景子)と4人の子どもたちは、結婚披露宴に出席していた。
天気も良く幸せそうな新郎新婦の姿に「いい門出だ・・・」と山本はつぶやく。
一見穏やかな生活をしているように見えるが、結婚披露宴から帰った山本は、モジミに子どもを連れて日本へ帰国するように忠告する。
広島に原爆が投下されたことを山本は知っており、敗戦が近いことを察知していたのだった。
その忠告も虚しく、その夜、ソ連が日本との条約を破棄し、満洲へ爆撃を開始する。
逃げる最中、山本は大怪我を負ってしまう。
動けない山本は「日本で必ず落ち合おう」と約束し、モジミに子どもたちを託した。

ラーゲリ(収容所)へ送られ、厳しい生活を強いられる山本たち

捕まった山本たち日本人は、シベリア鉄道に乗せられ、ソ連の奥地にある収容所(ラーゲリ)に連れていかれる。
ソ連は復興のために人手を欲しており、山本たちは満足に食事も与えられないまま、極寒の中で強制労働をさせられるのだった。
ロシア文学が好きで、ロシア語が堪能な山本は通訳の役割も担うことになった。

ソ連は、階級制度を維持したままの方が日本人を管理しやすいと考えており、仲間であるはずの日本人内でも、軍曹の相沢(桐谷健太)が山本たち下等兵に横暴なふるまいをするなど、不穏な日々が続く。
厳しい環境下で、どんどんと仲間は倒れて死んでいく。
痩せ細って死んでしまった仲間を埋葬しながら、希望を失いかけている仲間に対して山本は、「希望は必ずあります。ダモイ(帰国)の日は来ます。」と励まし続けるのだった。

あまりに希望の見えない日々がさらに続き、ついに正気を失い脱走を試みるものもいた。
しかし、いともあっさりとロシア兵に射殺される。
「殺すことないじゃないか・・・!!」あまりのやるせなさに憤慨する山本たち。
そんな人間としての尊厳を失いそうな環境下でも、山本は人間らしくあろうと仲間の死を悼んだり、時にはロシア兵に対しても強気に交渉をする。
そういった態度がロシア兵の気に障り、山本を庇った松田(松坂桃李)と共に、二人揃って栄倉(懲罰房)へ入れられてしまう。

松田は、かつて前線で仲間を見捨てて自分だけ逃げた過去があり、卑怯者の自分を許せずにいた。
変わりたいと思い山本を庇った松田だったが、栄倉の過酷な環境を経験し、また何があっても見て見ぬふりをする卑怯者へ戻ってしまうのだった。

その後も山本は繰り返し栄倉に入れられ、どんどんとやつれていく。
山本はモジミとの約束だけを心の支えに日々を耐えていた。
ぼろぼろの身体で山本は呟くのだった。
「こんな所でくたばるわけにはいかない・・・」

ダモイ(帰国)の知らせ。喜ぶ山本たちだったが・・・

限界が近い山本たちに、突如知らせがやってくる。
日本とソ連が国交を回復し、順次捕虜たちは日本へ帰還できることとなる。歓喜する山本たち。
帰国への列車の中ではしゃぐ下兵たちに対し、ラーゲリ内でも常に山本たちに当たりの強かった軍曹の相沢は「お前らみたいな馬鹿者ばかりだから日本は敗戦したんだ」と吐き捨てる。
そんな刺々しい態度の相沢にも、山本は優しく語りかける。
「相沢さん、もうダモイです。いいじゃないですか。・・・家族は、いるんですか?」
相沢はぶっきらぼうに、でもぼそっと答えた。
「満洲に来るときに、身重の妻を残してきた。」
相沢にも大切な人がいたのである。

海が見え、日本へ向かう船へ乗り継ぐ目前で列車が急停止し、山本・松田・相沢を含む一部の者が列車を降ろされ、別の収容所へ連れて行かれてしまう。
訳が分からず、怯える山本たち。
その収容所で、山本は満洲時代の上司である原(安田顕)と再会する。
再会に喜び、声をかける山本だったが、原は暴行を受けて顔も腫れあがり生気がなく、「私に近づかないでください」とだけ言い残して言ってしまう。

そして、山本たちはロシア兵から一人一人呼び出され、拘束の理由を告げられる。
それは、ロシアへの諜報活動を行なった”戦犯”としての罪を償うため、25年間の労働に処すというものだった。

絶望的な状況でも、自分を売った元上司を許し、仲間の笑顔を取り戻していく

ただの出張を諜報活動と言われ、誤解だと言っても聞く耳は持ってもらえない。
ますます荒んでいく日本人たち。
日本人内でも恨みのある者へ集団で暴行を加えるなど、荒んだ状況が続く。
標的になり、ボロボロになって倒れかけている原を助けようとする山本に原は言う。
「私があなたを売りました。・・・ただの出張を諜報活動にしました。妻子に会うためなら、私はなんでもする。私はそういう最低な人間です。」
だから、もう私に近づくな、と繰り返す原。
生き延びるためとはいえ、尊敬していた上司の裏切りに愕然とする山本。

25年という宣告に落ち込む山本だったが、足の悪い青年、新谷(中島健人)と出会う。
新谷は、僅かしか与えられない自分の食糧を犬に分け与えるような、心優しく前向きな青年だった。
彼は兵隊ではなく、漁をしていただけで捕まっているのだと聞いて、山本はやるせない気持ちになる。

新谷が字を教えてほしいというので、山本は字を教え、時に仲間たちと俳句を詠んだりと、僅かな楽しみを見つけていく。
しかし、何かを書き残すことはラーゲリではスパイ活動みなされ、新谷が字の練習をした紙は没収、俳句を詠むことも禁止される。
憤慨する仲間たちに山本は告げる。
「でも、これは没収されませんでしたよ」
そういって、余り布を丸めて作った小さなボールを差し出すのだった。

場面は変わり、野球に興じる山本たち。
ロシア兵にもうまく交渉し、野球に関しては多めに見てもらえているようだ。
そこには、僅かな時間だが、笑顔と活気を取り戻し、和気藹々とスポーツに興じる皆の姿があった。

正気を失いかけていた原の耳にも、皆の明るい歓声が届いた。
ふらふらとその歓声に引き寄せられて外に出た原。
実況放送役をやっていた山本は、その姿を見つけ、こう高らかにアナウンスするのだった。
「ここで選手交代のお知らせです。バッターボックスに立つのは、元慶応の4番、原幸彦!」
そのアナウンスを聞いて仲間たちは大盛り上がり。
息はしていたが、人間としては死にかけていた原が、心を取り戻した瞬間だった。

結局、ロシアの上層兵にみつかり、また懲罰を食らってしまう山本だったが、収容所内の日本人の結束力を強め、希望を与えた出来事だった。

日本との文通、そして山本が病魔に襲われる

また、良い知らせがやってきた。日本へ手紙が書けるようになったのだ。
嬉しくて嬉しくて、用紙いっぱいに愛する者たちへの想いを書き綴る山本たち。
松田は故郷に置いてきた母に向けて、相沢は妻と子供に向けて、想いを伝えるのだった。

待ち侘びる皆の元に、徐々に日本から手紙の返事が返ってくる。

山本の元には、モジミから子どもも自分も日本で生きているという手紙が届き、山本は幸せを噛み締めるのだった。
一方松田の元には、”母死去”と書かれた手紙が届き、松田は一人涙する。

自分に届いた手紙を読んだ相沢は、静かに一人雪が降り注ぐ外へ出ていく。
相沢の元へ届いた手紙には、妻もお腹の子どもも、空襲ですでに死んでいる旨が書かれていた。
相沢の様子がおかしいことに気づいた山本はすぐに後を追い、自暴自棄になり自らロシア兵に撃ち殺されようとする相沢を必死に止めるのだった。
「希望がなくても、生きなくてはだめだ・・・」と。
その時、山本は頭の痛みを訴え、雪の中に倒れてしまう。

ラーゲリの仲間が山本のために立ち上がる。

げっそりと痩せこけ、日に日にやつれていく山本。
しかし、ラーゲリ内の診療所では中耳炎としか診断されない。
きちんとした医師に診てほしいと憤る原や松田や仲間たち。

卑怯者に戻り、山本とはあまり関らず静かに暮らしていた松田だが、山本の行動に常に心を動かされていた。そんな松田はついに行動を起こす。
山本が大きな病院で診断を受けられるまで、労働を放棄し、食事も食べず、一歩も動かないと宣言する。
「殺されるぞ、一等兵!母親に会うんだろう」と止める相沢に、松田は言う。
「母さんは死んだ。・・・俺は卑怯者をやめる。
・・・ただ生きているだけじゃダメなんだ。山本さんのように生きるんだ」
最初は松田の身を案じて止めていた仲間たちも、徐々に松田に倣う。
相沢も。「付き合ってやるよ。どうせ、生きている意味なんかないからよ。」

ロシア語のできる原は、銃を突きつけられながらロシア兵に決死の交渉をする。
「要求はただ1つ!山本くんの診断です。」

要求が通り山本は大病院に運ばれるが、そこで下された診断は「末期の喉の癌」だった。

遺書をしたためる山本。

仲間たちは懸命に看病するが、日に日に声は掠れ、やせ細り、山本の最期が近づいていることは誰の目にも明らかだった。
そんな中、原は「必ず家族に届ける」と約束し、山本に遺書を書かせる。
遺書は全部で4枚。
原、松田、新谷、相沢が分担して隠しもつことにする。
厳しい手荷物検査をすり抜けてどう遺族の元へ届けようか、4人は試行錯誤するのだった。

山本の死、そしてモジミの元へ次々とラーゲリでの仲間たちが現れる

山本とモジミが生き別れてから11年。
拘束されていた日本人たちが帰ってくる最後の船が舞鶴港に帰ってくるという知らせが入った。
モジミは、ついに山本に会えることが嬉しくてたまらず、いそいそと迎えの準備をする。
その時、電報が届く。そこには、山本は既に死去しており、迎えの必要はないと簡潔に記載してあった。
子どもたちの前では、「お父さんは亡くなりました。でも、なんの心配もありません。」と気丈に振る舞ったモジミだったが、家の外に出ると、あまりの絶望に絶叫するのだった。
「嘘つき・・・」
それでも生きて、子どもを育てていかなればならない。なんとか日々を過ごすモジミの元に、ある日突然原が現れた。
驚くモジミに対して、原は言う。
「遺書を持ってきたのは、どうやら私が一番初めのようですね。」

原は、モジミと4人の子どもたち、山本の母の前で、山本の遺書を読み上げる。
「家族に会えずに死んでいくことがとても悔しい。でも、決して自分の死に落ち込むことなく、皆は健康に幸福に暮らしてほしい。それが何よりの自分の願いだ・・・」と。
山本が実際に書いた遺書は次々とロシア兵に取り上げられてしまったが、彼らは遺書を完璧に記憶し、家族の元へ届けにきたのだった。

原の次は松田が訪れました。
松田が持ってきたのは、山本の母宛に綴られた手紙でした。
「お母さま!自分はなんという親不孝でばち当たりだろうか・・・」
「最後に一目でいい。一目会って、一言だけでも言葉を交わせたらそれだけで自分は幸福だったのに・・・」
「子どもたちのために、あと10年だけ妻と共に闘っていただけないだろうか。」
山本の母はそんな遺書に対して涙ぐみながら、微笑みます。
松田も、会うことのできなかった母のことを思い、泣き崩れるのでした。

次は、新谷が現れます。
新谷が伝えにきたのは、子どもたちへの遺書でした。
「何よりも一番悲しいのは、成長した君たちに会えないまま死んでいくことだ。
これから人生の荒波に揉まれる君たちだが、立身出世などどうでも良い。
大切なのは、道義であり、誠であり、真心である。最後に勝つのは道義だ。」

最後にやってきたのは、相沢でした。
「俺は山本が嫌いだった・・・」と口火を切りつつ、相沢はモジミに向かって「妻よ!よくやった!実によくやった!!」と讃えるように山本の遺書を伝えるのだった。
ただ一言、山本に誉めてほしかったモジミは救われたような気になり、山本との別れを穏やかな気持ちで受け止めることができた。
そんなモジミの姿を見て、相沢は会うことの叶わなかった自分の妻を思い出し、涙を堪えるのでした。

山本の死、そしてモジミの元へ次々とラーゲリでの仲間たちが現れる

映画の最後は、回想シーンで終わる。

山本とモジミは綺麗な海が見える浜辺でデートをしている。
おそらく仲も深まっており、モジミとしてはそろそろもう一歩進む言葉が欲しそうな様子。
沈黙が続き・・・「あの!」と意気込んで山本が言い、モジミは期待に目を輝かせますが、山本から出てきたのは「帰りましょう・・・」と言う尻すぼみな言葉でした。
モジミはがっかりし、しょぼんとしながら山本の後をついていきます。
しかし我慢できず言うのです。「結婚してください!」
その言葉は山本の言葉と重なりました。二人は同時にプロポーズの言葉を口にしていたのです。

二人はびっくりし、そして互いに幸せそうに笑い合うのでした。

映画『ラーゲリより愛を込めて』の原作

映画『ラーゲリより愛を込めて』は、辺見じゅん作の『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(1989年、文藝春秋刊)というノンフィクションが原作となっています。
映画ではタイトルを少し変えることでネタバレを回避していますね。
興味がある方は以下から購入することができます。

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